「真珠湾攻撃」 日米の悲劇 ~フィクション落語~

時は第二次世界大戦、開戦前に戦争をしたいと思っていた国はどこにもありませんでした。平和主義によりドイツへの対戦が遅れてしまった。そのために戦争が拡大し、どうにもとまらなくなってしまったのです。


【ホワイトハウス】

う~、ハル、どうもこまったな


どうしました、ミスタープレジデント


ヒトラーがパリを陥落してしまった、このままじゃイギリスもやられてしまう、現にチャーチルが助けをよんでいる、このままイギリスもやられてしまったら、次は我が国だ


ミスタールーズベルト、それでは、イギリスに兵隊を出しましょうか


それがいかんのだ。「私は、戦争をしない。」「あなたの子供を戦争に行かせない。」こう言って世の中のご婦人の票をとりこんで当選したんだ。どお~して、あんなできもしない嘘をついたんだ。あ。嘘をつくんじゃなかった。ヒトラーが怖い、それにしても、なんとしてでも戦争をしなければならない。


ミスタープレジデント、ヒトラーは冷静でアメリカの船を攻撃しませんからね。それでは、おっちょこちょいの日本を利用しましょうか。


【官邸】

というわけでアメリカからハルノートをつきつけられた。


そうですね、総理、「中国から撤退しないと石油の輸出を禁じる」。こう書いてますね。


アメリカは、黒船、ペリー来航以来日本の友好国であったのにどうしてこうなったのか。どお~して、日独伊三国同盟なんて結んでしまったんだ~。結ぶんじゃなかった~三国同盟。それにしても、ヒトラーは不況をふっとばして演説も上手、権力を掌握し、こんなに調子がよくなるとは。あ。ドイツと仲良くするんじゃなかったあ。規則に真面目な国民性だ。相性もいいと思ったんだ。


総理、石油を止められたら我が国の防衛能力は落ち、ソ連が南下しておりてきたら、一度は勝った相手ですが次はどうなるか分かりませんよ。何と言ってもソビエトは「地政学的にも凍らない港がほしい」。こういう事情があるんですから、絶対におりてきてますよ。時代はいま白人の覇権国家による侵略戦争です。中国を思い出してください。イギリスによるアヘン戦争を。あれがあったから良き時代江戸を終わらせてしまったんです。白人は信用できませんよ。


あ、三国同盟を結ぶんじゃなかったあ。なんの~意味があったのか三国同盟に。


総理、そう気を落としてもいけません。前向きに石油を確保しにいきましょう。このあたりではインドネシアに行けば取れますよ。


そうか、インドネシアを攻めるにはシンガポールにあるイギリス海軍を攻略しないといかんな。そしてインドネシアを領有しているオランダと戦う。


それだけではいけません。背後のハワイに、ルーズベルトの、百万ドルのげんこつと呼ばれた、太平洋艦隊がありますから、そこからアメリカが攻めてきますよ。それが狙いなんですよこのハルノートは。


【ホアイトハウス】

(偉そうな感じで)ハル、作戦はうまくいくかな~。あ私は心配でたまらん。というのが、うまくいかなければ、イギリスの支援もできず、アメリカは身動きとれず、ドイツにやられてしまう。どして、「あなたの子供を戦争に行かせない」こんな公約をしてしまったんだ~。あ、嘘をつくんじゃなかった公約。こんな嘘つくくらいだった大統領になるんじゃなかったそれにしても第二次世界大戦が起こるなんて夢にも思ってもみなかった。


【戦艦】

その頃太平洋に戦艦が集まってまして


隊長、いよいよ明日ですね


そうだな、それにしても太平洋というのは広い海だな。


そうですね「海は広いな大きいな、行ってみたいな、よその国」ですね。


そうだな、「行ってみたいな、よそのくに」か。平和な時代がおとずれるといいな。


はい。


それではこのままいけば時間通りに攻撃にはいれる、宣戦布告と同時に攻撃だ、暗号電報をうっとけ、そして今日はゆっくり休んどけよ。


【大使館】

その頃、ワシントンにある日本大使館で、宴会がありまして。


課長、お疲れさまでした。栄転おめでとございます。


いやいやこれもみんなのおかでだ。今日はとことん飲んでくれ。


それでは、わーと、いきましょうね。


そうだなわーといこう、わーと


わーと、わーと。


ぐーぐーぐー。ん、もう朝か、昨日電報がきてたけど、まだ暗号を解読できてなかったからな、なんて書いてるんだろう。

ん~、ん~?もう攻撃の時間が過ぎてる。しまあ~った~、どう~し、~昨日あんなにもへべれけに飲んでしまったんだ~。そうかあいつが美味しい、焼酎があるって。な~んてことをしてしまったんだ~。


【ホワイトハウス】


ん~。まさか宣戦布告が遅れるとはこれは予想外だったな。


ミスタープレジデント、全てうまくいきましたね。


そうだな。でも、宣戦布告が遅れるとは、どうも日本の官僚というのは大事なときに頼りにならん。らしい。まあ、それは我が国の官僚も同じか、結局はいうことをきかない。それにしても、日本の海軍、「あの広い太平洋を渡って攻撃する時間の正確さ、まさに奇跡的だ。」


そうですね。そして。日本の官僚は奇跡的にドジですね。


そうだよな。


それにしてもこれで日本の同盟国のドイツとも戦争できますよ。日本はほんとうにおっちょこちょいですね。我がルーズベルトが「戦争しないという公約で当選した」こういうことを研究しなかったんですかね。(志らく口調)真珠湾を攻撃されなかったらこっちからは戦争できなかったのに。


そうだなハル。ま~日本も日本の事情があるからな。これで開戦のシナリオはできた。リメンバーパールハーバー、スローガンはできた。


その後、アメリカはダイナマイトでよせばよかったところ、原爆をつくりました。「後戻りできないもの」これを作ってしまいました。


参考書籍『日米の悲劇』小室直樹先生